「自分という人間を研究で表現したくて」

 近藤久雄(Principal Investigator, CIMR, University of Cambridge)

(実験医学、2003年10月号、海外ラボ独立編より一部抜粋)


 自分のラボを持ったときに最初に考えたことは、如何にして有名な巨大ラボに打ち勝って行くかということ。その結論は、「他の出来ないことをする」ということであった。

 有名ラボとの勝負を避けて重箱の隅を突っつくようなことはしたくなかったし、人員が少ないので空振りも出来ない。そこで、実験の精度を最大限に高めて普通なら見逃すようなことにも目を配り、その意味を徹底的に考える。その上で行けると思えたら、多少のリスクがあろうとも果敢に挑戦している。その際に常に「本質は何か」と自問自答している訳だが、そこに研究者の個性を色濃く反映させるべきと考えている。自分という人間の個性が良く表現される研究、これが私の目指すサイエンスである。

 また、私自身、留学を機に分野を変えている。これは一見無駄に見えるようであるが、私の研究を特徴づける大きな要素である。今更ながら、細胞生物以外の研究分野を経験していることは、他の細胞生物学者に真似ることの出来ない研究を確立する上で大いに役立っている。これからの若い人たちに強く勧めたい、分野を是非とも変えなさい。


           

九州大学大学院医学研究院・細胞工学・教授

e-mail : hk228@med.kyushu-u.ac.jp


1962年 愛知県生まれ

1981年 東海高校卒業

1988年 京都大学医学部卒業

1988年 京都大学医学部・助手

1992年 第29回ベルツ賞を受賞

         (1994年にこの仕事で学位修得)

1995年 英国王立癌研究所に留学

1999年 英国ケンブリッジ大学CIMRにおいて

            Principal Investigatorとして独立

2004年 三菱化学生命科学研究所・「細胞構造

            グループ」グループリーダーとして帰国

2006年 九州大学大学院医学研究院・教授

            分子生命科学系部門 細胞工学講座


その間に、科学技術振興事業団「さきがけ研究21」・「基礎的発展推進事業研究」の各研究代表を兼任

近 藤 久 雄  Hisao KONDO, M.D., Ph.D.

 

 学生時代は漕艇(競艇ではない!念のため)に入れ込みすぎて、授業にほとんど出なかった。 試験で初めて教官の顔を知るということも多々。そのために現在も、授業で学生さんの出席を取ることに大きなためらいがある。

 若い人に、研究がいかに楽しいものかを、知ってもらいそして味わってもらいたいと心から強く願っています。